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千葉地方裁判所 昭和47年(ワ)610号 判決

主文

一  被告らは連帯して原告森栄子に対し二、七六五、五五五円、原告森まり子に対し二、六四一、一三〇円、原告森良雄、同森つ江に対し各七五〇、〇〇〇円、および右各金員に対する昭和四七年一一月一一日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

三  この判決の主文一項は仮に執行できる。

事実及び理由

原告らは、主文同旨の判決および仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、次のとおり述べた。

一  昭和四七年六月九日午後零時五〇分頃、訴外吉田勝彦(以下訴外人につき訴外を省く)は、大型貨物自動車(千葉一一に二八六六、以下被告車という)を運転して、千葉市登戸町一丁目一番地先道路上を、稲毛方面より市原方面に向い進行して交差点に入つたところ、急に合図もなく左折したため、被告車と同一方向に向かつてオートバイで進行していた亡森貞一郎に衝突させ、急性腎不全、骨盤骨折を負わせて、同年同月一五日午後一一時二〇分千葉大学医学部付属病院にて死亡させた。

二  本件事故は、吉田勝彦が交差点で左折するにあたり合図も徐行もせず、左右の安全を確認しないで急に左折した過失によつて惹起したものである。

三  被告両名は、「株式会社誠興商会」という名称を用いて、共同して材木専門の治岸、重機荷役、運送等を業とするものであり、吉田勝彦を作業員兼運転手として雇用していたところ、本件事故は吉田勝彦が右業務に従事中発生したものであり、被告両名は、当時被告車を自己のため運行の用に供していたことになる。

よつて被告両名は、自動車損害賠償保障法三条、および民法七一五条により、本件事故によつて原告らが蒙つた後記損害を賠償すべき義務がある。

四  原告らは、本件事故により、次の損害を蒙つた。

1  森貞一郎の得べかりし利益の喪失による損害の相続

イ  森貞一郎は、本件事故当時満二四歳で心身ともに健康そのものであつた。

ロ  厚生省発表の第一二回生命表によれば満二四歳の男子の平均余命年数は四六・四七年である。

ハ  右のうち少くとも満六三歳に達するまでの三九年間森貞一郎は就労し得たはずである。

ニ  森貞一郎は、昭和四四年三月に千葉工業大学機械科を卒業し、同年四月より習志野市谷津町にある田中工業株式会社に就職し、生産管理課員として勤務し、死亡前三箇月間を平均して毎月五一、六六六円の給与(一箇年にすると六一九、九九二円)を受けていた。

ホ  森貞一郎の生活費は右収入の四割である。これを控除すると、年間純収入は三七一、九九五円となる。

ヘ  ホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除すると、森貞一郎の逸失利益の現在価格は七、九二六、九一五円となる。

371,995円×21.3092=7,926,915.854円

ト  原告森栄子、同森まり子は、森貞一郎の相続人として右損害賠償債権を相続分に応じて、原告森栄子は二、六四二、三〇五円、同森まり子は五、二八四、六一〇円をそれぞれ相続した。

2  入院治療費

イ  森貞一郎は、本件事故により事故当日より六月一五日まで千葉大学医学部付属病院に入院して治療を受けた。

ロ  原告森栄子は右の費用として四四四、九九〇円を支出した。

3  慰藉料

イ  原告森栄子は、昭和四五年六月森貞一郎と婚姻し翌年六月に長女原告森まり子を出産し、その後一年で前途のある夫を喪つた。

ロ  原告森まり子は生後一年で父と死別した。

ハ  父原告森良雄、母同森つ江にとつて森貞一郎は唯一の男子であり、一家の主柱であるが、大学卒業後わずか三年で死亡した。

ニ  本件事故によつて原告らの蒙つた精神的苦痛を慰藉するには、原告森栄子一、五〇〇、〇〇〇円、同まり子一、〇〇〇、〇〇〇円、同良雄およびつ江各七五〇、〇〇〇円をもつて相当とする。

五  損益相殺

原告森栄子は四、五八七、二九五円、同まり子は六、二八四、六一〇円の損害賠償債権を取得したところ、自動車損害賠償責任保険より五、四六五、二二二円の給付を受けたので、これを右損害金より相続分に応じて控除すると、その損害残は原告森栄子二、七六五、五五五円、同まり子二、六四一、一三〇円となる。

六  よつて原告らは被告らに対し被告らが連帯して原告森栄子に対し二、七六五、五五五円、同まり子に対し二、六四一、一三〇円、同良雄およびつ江に対し各七五〇、〇〇〇円、および右各金員に対する訴状送達の翌日から支払いずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

被告らは、いずれも、郵便による呼出しを受けたのに口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しないから、民事訴訟法一四〇条三項により原告ら主張の事実を自白したものとみなされる。

右の事実によれば、本訴請求は、いずれも正当と認められるから、これを認容し、訴訟費用の負担につき同法八九条、九三条、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 木村輝武)

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